小説(雷霆) | ナノ
闇を駆ける馬 暁に鬻ぐ猫(14/29)
 
「何故なら、俺は君が……」

 言いながら、リョウの顔も赤く染まってゆく。どちらから動くことも出来ず、ただ見つめ合うだけ。沈黙が、二人を包んだ。

(も、もしかして、リョウ……)

 言葉を待つライの方は確信というよりも願望。その期待で心音は爆発寸前である。

「えー……ああ、そうだ! こうしてはいられん。船の入手を考えねばな」

 ……突然、回って右へ身を翻すリョウ。

 常々の優雅さが完全に失われている。狼狽も甚だしく、顔は明後日の方を向いた。
 話の流れを無視した脈略のなさだ。ライが転けそうになったのは、言う迄もない。

 ……超“期待外れ”もいい所である。

「ほら、行くぞ。あの二人にも知恵を貸してもらはねばならん!」

「ね、態度……変だよ?」

「そんなことはない。兎に角、急ぐぞ」

 慌てるリョウが見れる事など珍しい。

 可笑しな挙動に釈然としなかったが、溜め息を吐くと、仕方なくその後を追った。
 


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