「何故なら、俺は君が……」
言いながら、リョウの顔も赤く染まってゆく。どちらから動くことも出来ず、ただ見つめ合うだけ。沈黙が、二人を包んだ。
(も、もしかして、リョウ……)
言葉を待つライの方は確信というよりも願望。その期待で心音は爆発寸前である。
「えー……ああ、そうだ! こうしてはいられん。船の入手を考えねばな」
……突然、回って右へ身を翻すリョウ。
常々の優雅さが完全に失われている。狼狽も甚だしく、顔は明後日の方を向いた。 話の流れを無視した脈略のなさだ。ライが転けそうになったのは、言う迄もない。
……超“期待外れ”もいい所である。
「ほら、行くぞ。あの二人にも知恵を貸してもらはねばならん!」
「ね、態度……変だよ?」
「そんなことはない。兎に角、急ぐぞ」
慌てるリョウが見れる事など珍しい。
可笑しな挙動に釈然としなかったが、溜め息を吐くと、仕方なくその後を追った。 |