小説(雷霆) | ナノ
闇を駆ける馬 暁に鬻ぐ猫(13/29)
 
「武闘家として鍛錬を積んだ身を、勇者の使役になる為、俺は多少無茶をしてでもアリアハンに……君に、会いたかったのだ」

「……リョウ」

 視線を絡めた、リョウの熱い眼差し。

 無論、リョウに求められたのは自分個人ではなく“勇者”という称号故だが……。

「僕、父さんの跡継ぎにされたこと、本当は嫌だったんだけど……だけど」

 突如、涌いた幸福感。瞳に自然と涙が溜まる。ライは、リョウの胸へ身を預けた。

「今、初めて勇者で良かったって……」

「ライ……」

「勇者だから、リョウに会えたんだって思ったら……なんだか、凄く嬉しいんだ」

 前世の魂が導いた絆。そして使命が紡いだ絆と……。恐らく、そのどちらを欠いても、巡り会いは果たせなかったのだろう。

 見えざる何かに与えられた……運命。

「ライ。長く求めた勇者が君であったことは、俺にとって、なによりも幸運なんだ」

 ライと同じくリョウもまた、運命の導きを感じていたらしい。囁くように告げられた言葉を聞き、ライの頬が赤みを帯びた。
 


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