一旦、ドックを後にして海が見える公園へ足を運ぶ。波の音を浴びながら、ライは傍らに立つリョウへ、熱い視線を注いだ。
「……リョウは、何処の生まれなの? 何度、聞いても教えてくれなかったよね」
東国バハラタから、カヌーで来たと。
……それは以前に訊いていたが、生まれた国の事は、毎回はぐらかされていたと。 好きな人の事を一つでも知りたいという本心を仕舞い、訊ねる瞳へ思いを込めた。
「生まれ、か」
ぽつりと洩らし、答えを倦ねていたが。
「あー……白状すれば、教えなかったというより、俺自身もよく分からないのだよ」
……と、リョウが苦笑を浮かべる。
「え、ええぇっ? どういうこと??」
「五年位前になるか。俺は死に掛けて海に漂っていた所を、海賊船に拾われたんだ」
海賊に助けられる以前の記憶は、殆ど失われているという。要するに記憶喪失だ。
出生が答えられないのも当然である。
「そんな事情が……。無理に聞いちゃいけないことだった?」
「いや、君が聞きたいというなら話そう」
そう言って、リョウは朧気な微笑みを見せると、海の方へ顔を向け遠い目をした。 |