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闇を駆ける馬 暁に鬻ぐ猫(9/29)
 
 ――世界一の造船技術というだけある。

 ドックには様々な船が並び、作業に行き交う人々から立ち上るのは、熱気と活気。

 中でも目を引いたのは、豪華客船だ。

「凄い。これで旅したら格好いいよね!」

「うーん。これほどの船だと、一日借りるだけでも相当の金がいるぞ?」

「そうなんだー……あっ、あっちにも、お船があるみたいだよ!」

 まるで紐を放たれた子犬だ。好奇心で輝いた顔を、リョウが眩しそうに見つめた。

 ……元気を取り戻したライが他の二人を待っていられる筈などない。結局、ライに押し切られる形で船を買いに来る羽目になったが、結果としては良かったといえる。

 落ち着きなく、ドックの中を駆け回るライの姿を見て、リョウもやっと安堵した。

「ねっ、どのお船にするの?」

「ライ。言い難いんだが」

 期待に満ちたライの眼差しを受け、リョウが困り顔を浮かべる。旅の資金が詰まった財布へ視線を移して、溜め息を吐いた。
 


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