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闇を駆ける馬 暁に鬻ぐ猫(8/29)
 
 ……どのくらい、そうしていたのか。

 実際は然程、時間は経っていない。しかし、得るものがあれば経過は長く感じる。
 ライはベッドからその身を起こすと、少し申し訳なさそうな目で、見上げてきた。

「……お船」

 ……と、一言。本来の目的だった事を思い出したらしい。直ぐに、ベッドから飛び降りると、リョウの腕を抱え込んできた。

「僕、もう大丈夫だから。お船、買いに行こうよ?」

「それなんだが、あの二人は不在なんだ」

 事情を聞いた途端、ライの頬が膨れた。

 酒飲みのガイラスはいいとして、ニノに至っては感想も述べられないというもの。

(最低……やっぱりあんな奴、仲間に入れるんじゃなかった)

 ライを限界に追い詰めた分際で、いい気なものだ。厚顔無恥としか言い様がない。
 ライの憤りは、頂点に達している。判断ミスと後悔の念で、赤い顔になっていた。

「合流するまで待つの? ……ニノなんか置いて行ちゃいたいんだけどな」

「こらこら。それは、流石に酷いだろ」

 リョウの方は、顔を綻ばせている。

 ライに不貞腐れる元気が戻ったことに、リョウは殊更に嬉しさを感じたのだった。
 


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