ライは、この所ずっと鳴り続けていた耳鳴りが、静かに収まってゆくのを感じた。
(あ……なんだろ。凄く、落ち着く)
堅く節立った手だが優しい。
ライを包む手には、戦闘時に見せる勇猛さなど無い。寧ろ、この優しい手で敵を倒せる事が、不思議に思えてきた位である。
癒しの手……とでもいおうか。
その手を持つ者は、ただ触れるだけで、相手へ、恩恵を与えることが叶うという。
正しく、リョウの手は癒しだ。
胸を荒らす不快は静へ。体を苛んでいた要因の全てが清められてゆく思いだった。
(リョウに触れてると、汚されたところが洗われてく感じがする)
もう大丈夫と、頷く。ライの頭を、手は慈しむように、労るように撫でてくれた。
「ライ、君の事は俺が守る」
「リョウ……」
頬に残った涙の跡を指でなぞり、真摯な眼差しがライへ、一心に向けられている。 考え倦ねたような間。その間を以て、形の良い上品な口元に、笑みが湛えられた。
「君を不安にさせる、全てから――な」
「うん、リョウ。ありがとう」
握り合った暖かい手を引き寄せると、ソッと頬へ当てる。ライは心の中で、“大好き”と秘めていた想いを繰り返していた。 |