「……ライ?」
呼び掛けと共に開く扉。……リョウが遠慮がちな顔つきで、部屋へと入ってきた。 ベッドの傍らに屈むと直ぐ、ハッとしたように目を開き、両手でライの頬を包む。
「っ……! 血が滲んでるではないか」
余りに強く噛んだ為だろう。鮮血が流れた。それをリョウの指先で、ソッと拭われるとライが身を捩らせながら反応を示す。
「本当に、どうしたというのだ。俺に話せないことでもあったのか?」
「う、ううん。何もない……よ」
逸らした目からも、嘘を吐いていると分かる。殊の外、リョウに言える筈はない。
「言えないなら、無理には訊かないが。だが、俺に何かしてやれることはあるか?」
……その時だ。
リョウが、指についた血を舐めた。それを見た瞬間、ライの胸が激しく波打った。
「手……」
「うん?」
「リョウ。……手、握っててくれる?」
「ああ」
緩やかな微笑みを見せ、リョウの大きな手が、ライの小さな手を優しく包み込む。 心根と同じように熱い手。それでいて、心地の良い温もりが、手へ浸透してゆく。 |