小説(雷霆) | ナノ
闇を駆ける馬 暁に鬻ぐ猫(5/29)
 
 堅く閉ざされたカーテンの所為か、部屋の中は仄暗く、宛もそれはライの鬱蒼とした心情を体現させているかのようである。

(あれから……ずっと体がざわざわする)

 洩れる息のリズムは断片的。尚且つ吐く息が喉へ引き戻ってしまう。この所、視界が朧気にしか見えず体は鉛のように重い。

 ライは、極度の緊張状態にあった。

(ニノが怖い)

 体に巻き付けたシーツの中へ、深く身を潜らせた。震える頬へ一筋の涙が伝わる。

 ……アッサラームから、ここへ来るまでの間。幾度となく、条件を迫られていた。
 それだけではない。仲間の目が向いてない隙を見計らい、身体へ触れるのである。

 今までも触れられた事はあったが、拒絶を受ければ止めてくれた。……しかし、最近に至っては、強引に関係を求めてくる。

 少しも気を置けず、また安寧が無いことがライの体へ不調を起こさせたのだった。

(あんな奴と……この先、旅を続けてゆく自信がない)

 苛む恐怖に怯え、強く唇を噛み締めた。
 


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