小説(雷霆) | ナノ
闇を駆ける馬 暁に鬻ぐ猫(4/29)
 
 どうやら、ライは気力の限界だったようだ。部屋へ着くと、ベッドに身を沈めた。

「ライはあんな調子だしよぉ。今日は休暇にしてくれねぇか?」

 ライの部屋へ目を配りながらも、気の方は漫ろだと分かる。……恐らく繁華街に軒を連ねた酒場が気になっているのだろう。

「遊びに来ている訳ではないのだぞ?」

「ちょっとくらいいいじゃねぇか。俺ぁ酒がねぇと調子が出ねぇんだよ」

 ……拝み倒す姿が非常に情けない。

 普段はニノの悪行を兄貴の威厳で叱りつけてるガイラスだが、酒の前では忽ち駄目人間へ成り下がるのが最大の欠点である。

「今回の目的は船だろう。故に……」

「お堅い事ぁ言いなさんなって。ニノなんざ、女買いに行っちまったぜ」

「姿が見えぬと思えば、それか……全く」

 お約束通りといえばお約束。ニノらしいとしか言い様が無い。同じく男として許容の範疇なのか、怒る気は起きないようだ。

「仕様がない。羽目を外し過ぎぬように」

 リーダーというより、何故か教官風。

 ガイラスは、噴き出しながら「あいよ」と、返事を一つ。早急に宿を出ていった。
 


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