小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(50/51)
 
 ――アッサラーム町、外門。一行の旅立ちを見送るため、ダルダスの姿もあった。

「ダルダス殿、大変お世話になりました」

 リョウの握手を受け止めると、ダルダスは名残惜しそうに、握る手へ力を込める。

「リョウ殿は、一角立っている方とお見受けした。愚息共は揃って抜けてる故、迷惑をお掛けしますが宜しくお頼み致します」

「俺ぁ迷惑掛けてねぇ……と、思うぞ?」

「お師匠っ。なんでオレが、リョウなんかに面倒見られなきゃなんねぇんだよ!」

 一緒くたにされ、ガイラスはショックなようだ。ガックリと、肩を落としている。
 ニノの方は……少しも迷惑の自覚は無い様子。唾を吐き捨てながら、不貞腐れた。

 その様を見て、リョウが苦笑を堪える。

「承りました。御安心ください」

 擁護もフォローもしないリョウ。

 実は、本人曰く冗談。しかし、生真面目な風貌が災いしてか、冗談には見えない。

「はっ、偉そうに。馬鹿じゃね?」

 ……と、ニノ。師匠に認められた事も相俟ってか、頗る付きで機嫌が悪いようだ。
 


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