小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(49/51)
 
 ……ニノが出て行ってから数時間。

 空が暁を呼ぶ時刻になっても、ライは動く事が出来ず、ただ天井を見つめている。
 泣き声もとうに枯れ果て、瞳には虚無が漂う。涙だけが、絶え間なく流れていた。

(口では、いい加減だけど……あいつなりに、ちゃんと意志があると思ってたのに)

 戦闘中、何度もニノによって助けられたと。漸く、心を許し始めてたのに……と。

 自分へ向けられる笑顔。自分が言った事で一喜一憂する態度。少々煩いが、切り替えが早いところは見習うべき長所で……。

 初めて出会った日から、今までの全て。

 些細な出来事。また詰まらない出来事までを思い出しながら、ライは泣き続けた。

(全部……。全部、僕の買い被りだったのか! あいつが、見せた全部が……)

 交換条件を求められたからではない。

 ニノの俗物さ、自分の信頼へ対する裏切りに、ライは深く傷付いていたのだった。
 


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