詰め寄りながらも、ニノの唇が歪んだ。
最低な行為をしていると、ニノ自身、理解は出来ているようだ。自分を睨んでいるライの瞳には、怒り、嫌悪、そして怯え。
ニノが如何に傍若無人と雖も、ライの憎悪で満ちた視線に胸が痛んでいるようだ。
“自分の女にしたい”という切望。
心が得る事が出来ないのなら、体から先に奪ってしまえば思い通りになる筈だと。 今迄の経験上、関係した女でその手管に逆らえる女など一人もいなかったと……。
「ライ、愛してる。だから――」
「よ、寄るな……。僕に触るな……っ!」
ニノの指が触れた途端、ライがその場でへたり込むと、子供のように愚図りながら小さな声で“リョウ”の名を呼んでいた。
その声に気付いた、ニノが薄く笑う。
「仕方ねぇ。今日のとこは勘弁してやっけどよ。次は、ちゃんと報酬は頂くからな」
感情で乱された顔を見せない為に、背を向けると、両手を掲げて“降参”を示す。 精一杯の虚勢だが、その事を気付かれないように、ニノは足早に部屋を後にした。 |