小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(43/51)
 
「オレがタダで動かねぇのは分かるな?」

「お前っ……!」

 いつかと同様の交換条件だと、それを察したライの胸には怒りが込み上げてくる。

 怒りは交換条件に対してだけでは無い。

 怒りの起因。それはどちらかというと二人の手前、ライが騒げないのを逆手に取ったニノの“狡さ”へ対しての方が大きい。

 もし騒ごうものなら、この男は簡単に秘密をばらすだろう。もし、ばれてしまったら“支援金”が、絶たれるかもしれない。

(お金の事だけじゃない。みんなが同行してくれるのは、僕が勇者だからなんだし)

 ……称号を剥奪されたら、旅も終わる。

 ニノはともかくとして、リョウとガイラスの討伐への意志は確かだ。自分が居ないとしても、旅を続けるだろうと思えたが。

(勇者じゃなくなったら、リョウ……みんなと別れなきゃいけないんだよね)

 リョウと自分を繋ぐ絆。自分が、勇者だからこそ、リョウと出会えたのだと……。

(それに……僕がついてた嘘が知られたらリョウに嫌われちゃうかもしれない)

 それだけは避けたい。……そう思った瞬間、ライの頭は承諾で力無く下げられた。
 


×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -