「オレがタダで動かねぇのは分かるな?」
「お前っ……!」
いつかと同様の交換条件だと、それを察したライの胸には怒りが込み上げてくる。
怒りは交換条件に対してだけでは無い。
怒りの起因。それはどちらかというと二人の手前、ライが騒げないのを逆手に取ったニノの“狡さ”へ対しての方が大きい。
もし騒ごうものなら、この男は簡単に秘密をばらすだろう。もし、ばれてしまったら“支援金”が、絶たれるかもしれない。
(お金の事だけじゃない。みんなが同行してくれるのは、僕が勇者だからなんだし)
……称号を剥奪されたら、旅も終わる。
ニノはともかくとして、リョウとガイラスの討伐への意志は確かだ。自分が居ないとしても、旅を続けるだろうと思えたが。
(勇者じゃなくなったら、リョウ……みんなと別れなきゃいけないんだよね)
リョウと自分を繋ぐ絆。自分が、勇者だからこそ、リョウと出会えたのだと……。
(それに……僕がついてた嘘が知られたらリョウに嫌われちゃうかもしれない)
それだけは避けたい。……そう思った瞬間、ライの頭は承諾で力無く下げられた。 |