あれから、二時間は経っただろうか。未だ、仕掛けの解除には至らない。精神的疲労は肉体疲労を上回るというものである。
ガイラスとリョウの顔に浮かぶのは深い疲労。“魔力”を備えていない二人からすると、仕掛けの類はお手上げなのだろう。
(二人共、疲れてるみたいだ)
不意にニノの方へと目を向ければ、ニヤッと、含みのある笑顔を浮かべて見せた。 ……まるで、ライの視線が向くことを、待ち構えていたかのような顔つきである。
(仕方ないな……。あいつに頼み事するなんて、癪だけど)
恐らく、ニノ以外の者には解けないと。
そう考え、ライが嫌々ながらニノの側へ向かうと、含みがある笑顔は更に嫌らしさを増す。何か企んでいると直ぐ分かった。
ライの胸に、一抹の不安が沸き上がる。
賎しい性格を知り尽くしているだけに、胸へ沸き上がる嫌な予感を拭えなかった。 案の定、ライに身を擦り寄せると“内緒話”というように唇へ耳を近づけてくる。
「なんだよ、なんか用か?」
「白々しいな。分かってるくせに。お前なら、仕掛け……解けるんでしょ?」
「まぁね」
目を馳せてみれば、他の二人は仕掛けに夢中な様子。こちらには気付いていない。
しめた、とばかりに唇が釣り上がった。 |