小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(42/51)
 
 あれから、二時間は経っただろうか。未だ、仕掛けの解除には至らない。精神的疲労は肉体疲労を上回るというものである。

 ガイラスとリョウの顔に浮かぶのは深い疲労。“魔力”を備えていない二人からすると、仕掛けの類はお手上げなのだろう。

(二人共、疲れてるみたいだ)

 不意にニノの方へと目を向ければ、ニヤッと、含みのある笑顔を浮かべて見せた。
 ……まるで、ライの視線が向くことを、待ち構えていたかのような顔つきである。

(仕方ないな……。あいつに頼み事するなんて、癪だけど)

 恐らく、ニノ以外の者には解けないと。

 そう考え、ライが嫌々ながらニノの側へ向かうと、含みがある笑顔は更に嫌らしさを増す。何か企んでいると直ぐ分かった。

 ライの胸に、一抹の不安が沸き上がる。

 賎しい性格を知り尽くしているだけに、胸へ沸き上がる嫌な予感を拭えなかった。
 案の定、ライに身を擦り寄せると“内緒話”というように唇へ耳を近づけてくる。

「なんだよ、なんか用か?」

「白々しいな。分かってるくせに。お前なら、仕掛け……解けるんでしょ?」

「まぁね」

 目を馳せてみれば、他の二人は仕掛けに夢中な様子。こちらには気付いていない。

 しめた、とばかりに唇が釣り上がった。
 


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