小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(41/51)
 
 ニノは退屈そうに、石扉へ寄り掛かってたが、仲間に気付くと扉から背を離した。

「お前ね、勝手な行動ばっかりして……」

「煩ぇな。つか、見ろよ」

 どこまでもマイペースなニノ。

 詰め寄るライを払い退け、顎先で扉を指した。抗議も気に止めず、したり顔で笑っているのだから憎たらしい事この上ない。

「鍵、この奥じゃね?」

「……らしいな。しかし、鍵穴らしき物が何処にも見当たらないではないか」

 いち早く扉に目を付けたリョウが、文字のような刻みを調べ難解な顔を浮かべる。
 頭の回転が速いリョウの事だ。魔力を要する仕掛けだと、気付いているのだろう。

 振り向き、ニノを真っ直ぐ見据えた。

「この仕掛けだが、君の魔力ならば解けるのではないか?」

 リョウの視線と合わさった途端、頼みの綱であるニノは、フイッと顔を逸らした。
 どうやら手を貸す気は無いようだ。壁へ凭れ掛かり、完全無視を決め込んでいる。

 ……あの態度なら、梃子でも動かないのは明白というもの。ニノの説得は諦め、三人だけで仕掛けを解くのに取り掛かった。
 


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