小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(40/51)
 
 ――同じ頃。残された三人は、そんな悪巧みがなされている事など知る由も無い。

 出口へ目を馳せると、溜め息を吐いた。

「あいつ、どうしたのかな?」

「そうさなぁ。なにが気に食わねぇのか、俺も知らねぇが。すまねぇな、二人とも」

「君が謝ることでは無いさ。だが、一人にさせては危険だ。兎に角、追おう」

 リョウは出口へと足を進めたが。

「どうした、行くぞ?」

 ……半ばで足を止める。ガイラスとライの二人が、一歩も動こうとしないからだ。
 目を見合わせ、附いてくる気が無い二人を見て、リョウが怪訝そうに眉を顰めた。

「お前ぇさんが寛大なのは分かるが、あの馬鹿を甘やかす事ぁねぇんだぞ!」

「リョウは怒ってないの? さっき態度、あんまりじゃないかな!」

 二人同時に、怒る権利があるリョウを差し置いてニノへの怒りを露わにしている。

 どうやら、二人の怒りに対して面食らっているらしい。答えを考え倦ねたような間の後で、悠然とした笑みを口元へ湛えた。

「何故だかは知らぬが、俺は彼に相当嫌われているらしいな。しかし、仲間には変わりない。捨て置く訳にはいかないだろう」

 そう言って、リョウがフッと息を吐く。

 我が事のように怒っている二人を諫めると、リョウは出口へと再び歩みを進めた。
 


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