小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(39/51)
 
 部屋を後にして、通路を進めば先には三叉路。中央の道は石扉で封じられている。

「ふぅん、成る程ねぇ」

 石扉を数回撫で、思い付いたのか顔を上げると、他の通路の先へと確認に走った。
 二方向は行き止まり。壁まで来ると、彫られた刻みをなぞるように、手を這わす。

 文字のように見えるが、文字では無い。

 ニノが触れた箇所が、突然、焔色に浮き上がった。どうやら、ニノの高い魔力に反応しているらしい。刻み自体に古代魔術が施されていると見て、間違いないだろう。

 副葬品の中で門外不出にしたい品。そこから考えてゆけば、答えは唯一つである。

 石扉の先にあるのは“魔法の鍵”だと。

 ……魔力を以てしなければ、解くことが叶わない仕掛けが、それを証明していた。

「はっ、使えるな。こいつは」

 独り言を洩らす顔に、さっきまでの嫉妬で乱された歪みは消え失せている。代わりにあったのは、性根の悪さが滲んだ顔だ。

 “思惑通りに事を運ばせる”と、奸計を張り巡らせながら壁へ凭れる。後は仲間を待つだけ。その間、次から次と沸き上がってくる笑いを、ニノは必死で堪えていた。
 


×
第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -