部屋を後にして、通路を進めば先には三叉路。中央の道は石扉で封じられている。
「ふぅん、成る程ねぇ」
石扉を数回撫で、思い付いたのか顔を上げると、他の通路の先へと確認に走った。 二方向は行き止まり。壁まで来ると、彫られた刻みをなぞるように、手を這わす。
文字のように見えるが、文字では無い。
ニノが触れた箇所が、突然、焔色に浮き上がった。どうやら、ニノの高い魔力に反応しているらしい。刻み自体に古代魔術が施されていると見て、間違いないだろう。
副葬品の中で門外不出にしたい品。そこから考えてゆけば、答えは唯一つである。
石扉の先にあるのは“魔法の鍵”だと。
……魔力を以てしなければ、解くことが叶わない仕掛けが、それを証明していた。
「はっ、使えるな。こいつは」
独り言を洩らす顔に、さっきまでの嫉妬で乱された歪みは消え失せている。代わりにあったのは、性根の悪さが滲んだ顔だ。
“思惑通りに事を運ばせる”と、奸計を張り巡らせながら壁へ凭れる。後は仲間を待つだけ。その間、次から次と沸き上がってくる笑いを、ニノは必死で堪えていた。 |