「今、ホイミ掛けるね? ジッとして」
リョウの体へ触れると、体温が伝わってくる。そんな当たり前のことが、ライに言い表せないような幸福感を与えてくれた。
瞬きで照らされたライの頬は仄かに赤みを帯び、瞳はリョウだけを見つめている。
「すまない」
「ううん」
リョウもまたライから視線を外さないまま、慈しむかのように、頭を撫でていた。 ……寄り添う二人。その二人が醸し出す雰囲気は、何処か立ち入りが躊躇われる。
それを眺めるニノの表情は、悔しさと深い嫉妬で酷く歪んでいた。ニノの立場からすれば、見るに堪えない光景なのだろう。
愛おしいと感じている女が、着実に自分とは別の男への想いを深めていると……。 瞳の力を以てしなくとも分かる、と。ライの様子から嫌でも認めるしかなかった。
顔を逸らし、フードを深く被る。
顔を隠したのは、自分でも酷い表情をしていると自覚しているからなのだろうか。
舌打ちを一つ。突きつけられた現実から逃げる為、無言のまま部屋を出ていった。 |