小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(37/51)
 
「はっ、本当にあんたは偉そうだな」

 吐き捨て、杖をリョウへ突きつけた。

「いつも人を見下しやがってよ。少しくらい強ぇからって、いい気になんなよな!」

 ニノのリョウに対する敵意……それを皆へ悟らせるのに、今の態度は十分過ぎる。
 紅玉へ魔力が蓄えられた事から、ニノの敵意は深いと、誰の目にも明らかだった。

「何だ、その態度は。リョウに謝れ!」

 ガイラスが詰め寄って、ニノの襟首を掴み揺さぶったが、怒りを物ともせずに余所を向いている。謝る気は更々無いようだ。

「その辺で止めておけ。ここで口論した所で意味はない。……鍵を得るのが先決だ」

 どういう訳か、リョウはニノの敵意自体には咎めず踵を返す。感情より責務の方が何より優先だと、その背中が示していた。


 現時点で、人食い箱に対抗出来る力量を持つのはリョウのみ。仲間を部屋の端へ控えさせると、残る宝箱を具に調べてゆく。

「無い、な」

 最後の一つを確認した後、直ぐ閉じた。

 どの宝箱も、中身は副葬品には及ばないガラクタばかり。少額の金銭がいい所だ。
 やはり、リョウが最初に睨んだ通り罠だったらしい。幾つかは、人食い箱だった。

 流石といおうか、一人で対処していた割りに、リョウは大した傷を負っていない。
 


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