「ご、ごめん。もう……平気」
体を離した、ライの顔は真っ赤である。
醜態を見せたことより、想う相手に抱かれた……それが、恥ずかしくて堪らない。
恍惚な顔付き。瞳が潤み、揺れている。
その表情を見て、何を感じたのか。リョウの唇が“何か”を語ろうと開かれたが。
「ライ、ホイミ掛けてくんね?」
……いきなり、二人の間へ突き出された血塗れの腕によって、閉じられてしまう。 “重傷だ”と、アピールするニノ。言う迄も無く反省は露ほども見受けられない。
一方、邪魔を受け、ライが膨れっ面をする。呆れて言葉も出ないといった様子だ。
「迂闊なお前ぇには、これで十分だろ!」
ガイラスはそう怒鳴ると、薬草の束をニノの顔へ、思いっきり投げつけてやった。
「呪文を覚える、覚えないは君の自由だ。それについて、咎めはしない。だが、こう度々周りの者をも巻き込む事態を引き起こされては適わん。少し行動を慎みたまえ」
リョウの口調は静かだが、怒りを抑えているのが分かる。黒い瞳で射られ、たじろいだのも一瞬。直ぐに睨みへ切り替えた。
自ら深手を負い、ライを危険に晒した。
全て、自分の所為だと。……頭で理解出来てもリョウから咎められるのは、面白くないらしい。見るからに不貞腐れている。 |