「お宝、お宝っ。何が入ってるかなっ」
鼻歌混じりで、腕をグルグルと軽快に振り回しているニノ。因みに、顔の方はというと、欲に汚れた笑顔で満たされていた。
……どうやら、鍵など眼中無いようだ。
強欲でまみれた内面がありありと表れた表情だ。勇者一行とは、とても思えない。
宝箱へ、手を掛けようとした直前。リョウが、ニノの腕を掴んでそれを阻止した。
「罠やも知れぬから徒に開けるな。確か、中身を判定する呪文があったよな?」
「あ? ああ、インパスな。無理! そんなクソ地味な呪文、オレ覚えてねぇもん」
「なんだと? 君の実力ならば覚えるくらい容易いだろうに」
「つか補助呪文なんか使えても、ぶっ殺せないじゃんか。覚える価値、無いない!」
……と、気楽そうに笑う。
聞けば使える補助系は、瞬間移動呪文ルーラと、脱出呪文リレミトだけとのこと。 怠け者、加えて派手好きの男である。攻撃系以外を勉強する気は更々無いらしい。
リョウの手を然も“ウザい”といった感じで振り払い、意気揚々と宝箱を開いた。 |