小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(33/51)
 
「お宝、お宝っ。何が入ってるかなっ」

 鼻歌混じりで、腕をグルグルと軽快に振り回しているニノ。因みに、顔の方はというと、欲に汚れた笑顔で満たされていた。

 ……どうやら、鍵など眼中無いようだ。

 強欲でまみれた内面がありありと表れた表情だ。勇者一行とは、とても思えない。

 宝箱へ、手を掛けようとした直前。リョウが、ニノの腕を掴んでそれを阻止した。

「罠やも知れぬから徒に開けるな。確か、中身を判定する呪文があったよな?」

「あ? ああ、インパスな。無理! そんなクソ地味な呪文、オレ覚えてねぇもん」

「なんだと? 君の実力ならば覚えるくらい容易いだろうに」

「つか補助呪文なんか使えても、ぶっ殺せないじゃんか。覚える価値、無いない!」

 ……と、気楽そうに笑う。

 聞けば使える補助系は、瞬間移動呪文ルーラと、脱出呪文リレミトだけとのこと。
 怠け者、加えて派手好きの男である。攻撃系以外を勉強する気は更々無いらしい。

 リョウの手を然も“ウザい”といった感じで振り払い、意気揚々と宝箱を開いた。
 


×
第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -