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俗物の天人(32/51)
 
 ――探索から数時間が経過しても猶、未だ“魔法の鍵”は杳として見つからない。
 広い内部、複雑な構造。更に、度重なる戦闘と……全員が、辟易し始めていた頃。

「此の場所は――」

 辿り着いた個室。最初に中へ踏み入れたリョウの目が、驚きによって見開かれた。

「盗掘の被害は無いみたいだね」

「ああ。そうみてぇだなぁ」

 誰もが、呆けた様子で室内を見渡す。

 ピラミッドは盗掘が後を絶たないというのに、この個室に至っては無関係らしい。
 床へ雑多に散らばる副葬品の数々。それに混じり、十数個の宝箱が置かれている。

(宝箱なら、鍵がある可能性も高いけど)

 そう考えて近付こうとした足が、寸前で止まった。躊躇いの理由は唯一つ。鍵なら問題もないが、もしも他の副葬品ならば盗掘者の行為と何ら変わらないからである。

「ねぇ、リョウ。どうしたらいいかな?」

「そうだな。一先ずは……」

 ……その時だ。

 距離を縮めた二人の間を、ニノが、グイッと無理矢理に、体を割り込ませてきた。
 


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