小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(30/51)
 
「確かに、死者を冒涜しているようで後味悪いが……。“在るべき場所”へ送ってやると考えて割り切ってゆくしかなかろう」

 傀儡の魔から解放すれば、肉魂も黄泉へ還れる。理屈では分かるが、人間であった者との戦いなど、成る可くなら避けたい。

 押し黙ったガイラスとライの表情には、そういった心情が刻まれてるようだった。

「そう、嫌な顔するなよ。俺とて同じ気持ちだが、仕方ないではないか」

「うん……。ごめん」

「そうさなぁ。元凶は、バラモスのクソ野郎だ。一刻も早く大将をぶっ倒して、ここの奴らを還えしてやろうじゃねぇか!」

「ガイラスの言う通りだ。我らの成すべき事は、彼らの冥福にも繋がるのだからな」

 俯くライの頭へ大きな手が添えられる。

 見上げれば、リョウの優しい眼差しが向けられていた。振り向くと、ガイラスが意気込みで力強く頷いているのが目へ映る。

(僕って、駄目だな。いつも教えられるばっかりで……もっと、しっかりしなきゃ)

 二人が仲間で良かった……と、思う。

 不意に、胸へ広がった感動。二人の心根に触れて、ライの目頭が熱くなってゆく。
 


×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -