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俗物の天人(29/51)
 
「これは推測だが、アンデットと雖も傀儡に過ぎぬからだろうな」

 傀儡。つまり、生命を持たざるものを、宛も、生きているかのように操る魔術だ。
 核に死肉を纏った魔物と違い、意思も持たず、ただ動かされているだけだという。

 アゾナンゴビーの時とは違い、倒すのに聖なる攻撃も要さない。動きを止めるように砕いてしまえば、それで済むのである。

「それだと先に入れ物を作らなきゃいけないんでしょ。随分と手間な事するんだね」

「いや、ファラオならば殉葬も行われているだろう。恐らく魔物の元は、殉死者だ」

「するってぇと何かい? ここのアンデットは、人間だってのか」

 問いに、リョウが無言で頷いた。それを見るや否やガイラスの顔も青褪めてゆく。
 二人の会話の意味が分からず、ライは首を傾げると、ガイラスの腕を引っ張った。

「ねぇ、じゅんそう……って、なに?」

「つまり、お偉いさんが死ぬと、家来も後を追わせるつぅ風習だ。生きたまま、な」

「酷いことを。それを聞いちゃったら、戦いたくないんだけど……」

 当然な反応だ。真面な精神の人間なら、良心の呵責と葛藤するのが、普通だろう。

 落ちてゆく視線が、自然と先ほど倒したミイラ男へと注がれる。ライは元より、ガイラスも同意見らしい。苦い顔のままだ。
 


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