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俗物の天人(28/51)
 
「くっ……堪らないな!」

 斬りつけた後、ライが口を覆い呻く。

 攻撃をすれば、劣化した包帯が粉塵となって、舞い上がるのである。吸い込んだ途端、喉の奥が焼けるような痛みを感じた。

「どいてな!」

 咳き込むライを退け、ガイラスが斧を横へ払う。それにより、ミイラ男の胴体が二つへ切断されたが仕留めるには足りない。

 分かれた上半身と下半身が、別々に床を這い回っている。……まるで、トカゲだ。

「まだ絶えぬか!」

 長い足を跳ばし、疾風を巻き起こす。

 ライの鼻先へ、白檀の香りが掠めてゆくと同時、ミイラ男の動きも漸く止まった。

「リョウ、ありがとう」

「何、礼には及ばないさ。しかし、墓だけある。此処はアンデット系が多そうだな」

「アンデット……。でも、こいつらは普通の攻撃で倒れてくれるんだね」

 いざないの洞窟での戦いを思い出したのだろう。ライが、不快で眉を顰めている。

 核を軸に動く魔物は手強かったと。またアゾナンゴビーのような魔物へ出会そうものなら体が幾つ有っても足りないと……。

 ……そう、ライの表情は語っていた。
 


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