小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(27/51)
 
 ――日干し煉瓦が組み合わされた僅かな隙間。そこから、生緩い風が流れてきた。

「凄い所だね。本当にお墓なの?」

 壁一面には、レリーフが描かれている。

 ライは色彩鮮やかな壁絵の前で足を止めると、高い技巧へ感嘆の溜め息を吐いた。

「そりゃあ、ただの絵じゃねぇぜ。ファラオが成した業績だのが描かれてんだ」

「へぇ……そうなんだ」

「デケェ墓なんか作っから盗掘に目ぇつけられんだよ。この国の奴、馬鹿じゃね?」

「一理あるな。王とて、盗掘者と眠る羽目になるとは考えてもみなかったのだろう」

 四角推をした建造物……ピラミッド。

 その内部は盗掘の限りを尽くされ、神聖という言葉からは程遠い。盗掘者の成れの果てか、床には多くの白骨が確認できた。

「皆、気を付けよ。……起こしたようだ」

 やおら言い放ち、リョウが構えを取る。

 リョウの視線の先。白骨の山が不自然に崩れると、中から現れたのはミイラ男だ。

 緩んだ包帯を靡かせ襲い掛かってきた。
 


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