――日干し煉瓦が組み合わされた僅かな隙間。そこから、生緩い風が流れてきた。
「凄い所だね。本当にお墓なの?」
壁一面には、レリーフが描かれている。
ライは色彩鮮やかな壁絵の前で足を止めると、高い技巧へ感嘆の溜め息を吐いた。
「そりゃあ、ただの絵じゃねぇぜ。ファラオが成した業績だのが描かれてんだ」
「へぇ……そうなんだ」
「デケェ墓なんか作っから盗掘に目ぇつけられんだよ。この国の奴、馬鹿じゃね?」
「一理あるな。王とて、盗掘者と眠る羽目になるとは考えてもみなかったのだろう」
四角推をした建造物……ピラミッド。
その内部は盗掘の限りを尽くされ、神聖という言葉からは程遠い。盗掘者の成れの果てか、床には多くの白骨が確認できた。
「皆、気を付けよ。……起こしたようだ」
やおら言い放ち、リョウが構えを取る。
リョウの視線の先。白骨の山が不自然に崩れると、中から現れたのはミイラ男だ。
緩んだ包帯を靡かせ襲い掛かってきた。 |