小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(26/51)
 
「平和の貢献になるなら差し上げても構いませんが。ですが、余りに危険な場所。誰かに取りへ向かわせる訳にはなりません」

「ならば、我々にピラミッドへの立ち入りをお許しください。自ら取りに参ります」

 リョウの瞳に、強い志が滾っている。

 それが、伝わったのだろう。ネフェルティツィは、観念したように頭を振り……。

「分かりました。許可、致します」

 ……と、立ち入りの許しをくれた。


 次なる目的地は“ピラミッド”と。

 足早に退出してゆく一行を見送った後、ネフェルティツィが、側近を呼びつけた。

「あの方、何処かで会った気がしてならないのです。……覚えていませんか?」

 一瞬、誰の事か分からずにいた側近だったが、暫くして「あっ」と、声を上げる。

「確かに、似ていましたが……。それなら向こうも、それなりな反応をする筈です」

 全くの初対面に対する素振りだ、と。

 そう、側近が解釈しても、ネフェルティツィは腑に落ちないらしく、首を傾ける。
 そんな主の姿を見ても尚、側近は“他人の空似ですよ”と、決めつけるのだった。
 


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