「遙々着て頂いた所、誠に申し訳ありませんが、王宮内には現存いたしませんわ」
あるのはピラミッドだと、説明する。
「ピラミッドっうと……墓じゃねぇか」
ガイラスの囁いた独り言が聞こえていたらしい。ネフェルティツィが“正解だ”という頷きを見せると、困惑で眉を顰めた。
「第十八王朝ラムセン二世の墓です。公式記録によりますと、その際の副葬品としてファラオと共に墓へ埋葬されたそうです」
副葬品。……それは、ファラオが死者の世界へ逝っている間でも、何不自由なく暮らせるよう納められる品々のことである。 勿論、ファラオの所持品だけあって、日用品一つ取っても、価値は国宝級なのだ。
「御存知かもしれませんが、予てから墓には盗掘者が、後を絶たないのです。ですから、鍵が残っているかは保証出来ません」
ネフェルティツィの困惑が示すもの。
つまり盗掘の現実。更に付け加えれば、最近、墓には、魔物が出現するとのこと。 それ故、盗掘を知りながらも、警備兵の配置も取り下げ、現在は野放しだという。 |