見惚れているのは、ライだけでは無い。
その場に居る殆どの者が、ネフェルティツィの一挙手一投足を、目で追っている。 ネフェルティツィの方は、美人の慣れなのか、視線を気にも止めていない様子だ。
「紹介状は拝見致しました。わたくしに出来る事なら、何なりと力になりましょう」
そう言って、口元を笑みで結ぶ。
誰もがネフェルティツィの美へ酔いしれる中。唯一、平静を保っている者がいた。
「我々は貴国が、魔法の鍵を所有すると聞き、ご助力を御願い致したく参りました」
女王の厚意に、リョウが前へ歩み出た。
儀礼に則り、用件を伝えたリョウの表情には敬意以外の感情が無いように見える。
……至って、普通もいいところだ。
「魔法の鍵を、ですか?」
ネフェルティツィは、思案したかのように唇に指を当てる。稍もして、近くにいた側近を呼び寄せると何かを耳打ちをした。
二、三度、頷き、再びこちらを向いたネフェルティツィ。表情が、僅かに険しい。 |