(綺麗な女の人と見れば、すーぐ、鼻の下が伸びるんだから。本当にニノって……)
先程から、心の中で渦巻いていた文句。
それを続けようとしたが、現れた女性を目にしたと同時に、文句も掻き消された。
「お待たせ致しました。わたくしが、この国の主、ネフェルティツィです」
優美な笑みを湛え、玉座へと腰を卸す。
座った動作で衣装が揺れる。その僅かな動きが起こす風は甘い。女の美しさを妖しく際立たせる、乳香(フランキンセンス)の香りだ。
(この人が相手なら……仕方ない、か)
美しい、と素直に納得できてしまう。
女王ネフェルティツィは意外と思えるほど若い。褐色の肌が艶めかしく、重たげな睫の奥で、琥珀のような瞳が輝いている。
この麗しい女王なら、ニノが……いや、普通の男なら惑わされて当然といえよう。 同じ女であるライでさえ、ネフェルティツィの妖しい美しさに、見惚れたらしい。
無礼だと承知の上で、女王を直視することが出来ずに、真っ赤な顔で俯いていた。 |