小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(22/51)
 
 ――天井が高く造られているのは、厳しい日差しを避ける為だろうか。其処彼処に引かれた水路が、目にも涼しさを与える。

 オアシスを中心に、礎を築いた都。幾千年の歴史を持つ砂漠の楽園――イシス国。

「ど、どうも」

 水を注いでくれた女官に、礼を述べたライの視線は、所在無く下へと落ちてゆく。
 それでも視界の端で揺れる乳房が気になるのか、俯いたまま視線を外せずにいた。

(みんな、恥ずかしくないのかなぁ)

 同性と雖も、戸惑うのは無理も無い。

 この国の人々は、男女共に半裸だ。身に纏っている紗に、身体を隠す機能は無い。
 秘められた場所までもが、透けて見えるのだから目のやり場に困る、というもの。

「いい国じゃねぇか」

 ぽつりと洩らされたガイラスの呟き。

 ニノに至っては、側に居るだけで異様な熱気を感じる。色欲に興奮をしているのだろうか、熱っぽい息遣いが聞こえてきた。

 ニノは、これ以上無い位のスケベ面だ。
 口は半開き。今にも、端からヨダレでも垂れてきそうな、酷い崩れっぷりである。

(スケベッ、最低!)

 湧いた苛立ちを乗せ、繰り出したのは肘鉄。真面に食らったニノが呻きを上げた。
 


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