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俗物の天人(21/51)
 
「怪我は……ある訳なかろうな」

 敵を一掃させた後、リョウが仲間へ向け放った一言。解説する迄も無く、皮肉だ。
 先ほどの戦闘時に於ける失態。あの様では皮肉も致し方無いといえる。だが……。

「お、おっかねぇ……なぁ」

「つか、あんたって化け物じゃね?」

「リョウ、ちょっと怖いよ」

 ……反省は疎か、暢気な感想を洩らす面々を見るなり、リョウが溜め息を吐いた。

「君らは揃いも揃って……まあ、いい」

 取り合っても無駄だと思ったらしい。またも、叱責を飲み込むと、地図を広げる。
 大凡の予測で、イシスまでは三日といったところか。前途遼遠だと、眉を顰めた。

「戦闘は俺に任せるがいい。兎に角、君らは無理せず体力の温存に努めろよ」

「あの……リョウってば怒ってる?」

「怒ってなどいないさ。君は君の出来る範疇で頑張ってくれれば、それでいい」

 根っからのリーダー気質なのだろう。

 湧いた苛立ちを押し殺し、リョウは、ただ黙々と目的地へ、足を進めるのだった。
 


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