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俗物の天人(19/51)
 
「オレ、いち抜け! 後は任せたっ」

「お前ぇって、奴ぁ……よし、リョウ!」

 リョウが無言で頷く。口で、ギュッと鉄の爪の留め紐を結び、地面を蹴り上げた。
 鋭き爪が巨大な鋏を破壊する。一旦の間合いを取り、即座に足技へ切り替えした。

 強烈な二段攻撃で、一体は絶命した。

「うおらぁーーっ! 食らえ、蟹野郎!」

 続いて、斧が空を切り裂く。

 一瞬早く、地獄の鋏三体が、一斉に唱えたのは耐性強化呪文“スクルト”である。
 只でさえ堅い甲羅が鋼のような強度を得て、ガイラスの攻撃は針程の威力も無い。

「だあっ! なんで、俺の攻撃が効かねぇんだよおっ!?」

「僕も魔法、封じられてるみたいだ」

 “魔力が集められない”と、ライは手を握り締めながら、小さな嘆息を洩らした。

「あの蟹は然程、素早くはない。注意すれば、反撃など恐れるに足りん!」

 “猫を狙え”と、差し向けるリョウ。

 しかし、肝心の“素早さ基準”は電光石火の早さを誇るリョウ自身が基。当然の如く、他の三人が適わないのも無理はない。
 


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