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俗物の天人(18/51)
 
「チッ、こうなったら!」

 踏み込んだ足が沈んだ。

 ……またしても、灼熱の砂へ倒れ込む羽目になり、ニノの呻きは悲鳴に変わった。

 沈んだ箇所、落ち窪んだ砂が強風で舞い上がる。砂の中より現れたのは、緑の蟹。
 全長は八十センチ程度だろうか。巨大な蟹、“地獄の鋏”が、全部で……四体だ。

「ほらな、言わんこっちゃねぇ。よし、殲滅せんめつぅ」

 相変わらず、切り替えが早い。意気揚々といった感じで、杖を指し向けたが……。

「イオラーーーーッ! イオ、イオ……。
 い〜お? あ、あれっ、えぇっと……」

 唱えも虚しく呪文は発動の兆しを見せない。杖を振ってはみたが、無意味で無駄。

 空を飛ぶキャットフライが、笑ったように見えた。そう、この魔物が得意とするのは、魔法封印呪文“マホトーン”である。

 ……魔力を以て対象の周囲へ、魔法を無効化させる“防御膜”を作り出す呪文だ。

 封じられてると察した次の瞬間、脱兎の如く、ガイラスの背後へその身を隠した。
 


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