――イシス大砂漠。吹き荒ぶのは黄金の砂、東西南北が不明になる程の砂漠地帯。
特に乾期を迎えた今は、風も強いのだ。
照りつける太陽が皮膚を焦がすかと思えるくらい暑い。上ばかりでは無く、靴底を通り越し、焼けた砂の熱が伝わってくる。
「お師匠〜。バシルーラで飛ばしてくれりゃあ、楽なのによ。……マジ恨むぜ」
ブーツの中に砂が入ったらしい。片足で取り除こうと試みたが途中で転けた。灼熱の砂へダイブしたニノが、呻きを上げる。
「うちは陸舟があるってのによう。貸してもくれねぇしなぁ」
「ダルダスさんってば、“歩いて行け”の一点張りだったね」
流れる汗を拭くガイラス。
“日除け”と……ばかりに、その背中を陣取っているライは、不満の膨れっ面だ。
「修行の一貫というやつか? なかなかスパルタ。さすが無駄というものが無いな」
ただ一人、砂嵐を物ともしていない。
他のメンバーは、汗と砂にまみれているというのに、リョウだけは爽やかである。 まるで、冷涼の中に居るような顔つきを見て、ニノが苛立たしげな舌打ちをした。 |