小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(16/51)
 
 ――イシス大砂漠。吹き荒ぶのは黄金の砂、東西南北が不明になる程の砂漠地帯。

 特に乾期を迎えた今は、風も強いのだ。

 照りつける太陽が皮膚を焦がすかと思えるくらい暑い。上ばかりでは無く、靴底を通り越し、焼けた砂の熱が伝わってくる。

「お師匠〜。バシルーラで飛ばしてくれりゃあ、楽なのによ。……マジ恨むぜ」

 ブーツの中に砂が入ったらしい。片足で取り除こうと試みたが途中で転けた。灼熱の砂へダイブしたニノが、呻きを上げる。

「うちは陸舟があるってのによう。貸してもくれねぇしなぁ」

「ダルダスさんってば、“歩いて行け”の一点張りだったね」

 流れる汗を拭くガイラス。

 “日除け”と……ばかりに、その背中を陣取っているライは、不満の膨れっ面だ。

「修行の一貫というやつか? なかなかスパルタ。さすが無駄というものが無いな」

 ただ一人、砂嵐を物ともしていない。

 他のメンバーは、汗と砂にまみれているというのに、リョウだけは爽やかである。
 まるで、冷涼の中に居るような顔つきを見て、ニノが苛立たしげな舌打ちをした。
 


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