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俗物の天人(15/51)
 
「最後の一つは、何処ぞの場所へ安置されているらしいが、子細は分からぬ。故に、魔法の鍵を手にする事が、先決だろうな」

 地図を元の壁へ戻すと、ダルダスは話の締め括りに咳払い立て、再び向き直った。

「しかし、王家の宝ならば簡単に頂けるものでしょうか?」

 尤も疑問である。だが“問題ない”というように首を振ると、紙へ筆を走らせた。

「女王陛下は聡明な方だ。勇者殿の旅に必要だと知れば、譲って下さるだろう」

 紙を渡すと、微笑みで唇を結ぶ。

 渡された“それ”に目を落とし、袂へ仕舞うと、リョウが感謝を込め頭を下げた。

 ダルダスは、王家とも懇意の間柄であるのだろう。金箔が押された重厚な紙には家紋が刻まれている。……正式な紹介状だ。

 これで王宮への出入りは自由……と、確信を得て、リョウが嬉々として身を翻す。

「皆、支度を整えろよ。直ぐ発つ」

「えーっ! まだ町の中、見てないのに」

「オレ、本調子でねぇんだけど?」

「せっかく、実家へ帰ってきたんだ。もう少しだけ休ましちゃくんねぇか?」

 三人の文句も当然といえば、当然だが。

「五分だ。それ以上は待たぬからな」

 即座に低い声で言い放つ。対するリョウは、反論すら挟ませないといった具合だ。

 事は早急に。そう、暗に示された無言の制圧に、仕方なく腰を上げる三人だった。
 


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