小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(14/51)
 
 一方、“もう一つの目的”を聞く為に、ダルダスと向き合っているのは、リョウ。

 暫くの間を置き、ダルダスが口を開く。

「勇者殿の旅には、やはり“船”が必要不可欠であろうな」

「船、ですか」

 旅の知恵を仰ぐと、ダルダスはそう教えてくれた。何か問題でもあるのか、聞いたリョウの表情には難色が浮かんで見える。

「西に位置するポルトガ国は、造船業が盛んなのだ。そこで購入するがよかろう」

「ダルダス殿。お言葉ですが、西に渡る関所は、封じられているらしいのです」

 リョウは盗賊の鍵をテーブルへ置いて、手持ちの鍵では開錠出来ない旨を伝えた。

「心配なさるな。世の中には更に複雑な構造でも、開錠できる鍵は存在するのだ」

 立ち上がり、壁に貼られた地図を外し広げる。指が、ツーーッと地図上を滑った。
 アッサラームを西へ。イシス大砂漠を通り抜け、南部に到達すると動きを止める。

 女王が統治するという、イシス国だ。

「一つは我が家の祖である魔法使いが、イシス王家へ献上した“魔法の鍵”である」

「一つと、仰るからには、他にも鍵があると。……そうですね?」

 即座に先へ意識が向く、リョウの炯眼。

 それが見て取れるリョウの視線に、ダルダスが深く感心したような笑みを湛える。
 


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