一方、“もう一つの目的”を聞く為に、ダルダスと向き合っているのは、リョウ。
暫くの間を置き、ダルダスが口を開く。
「勇者殿の旅には、やはり“船”が必要不可欠であろうな」
「船、ですか」
旅の知恵を仰ぐと、ダルダスはそう教えてくれた。何か問題でもあるのか、聞いたリョウの表情には難色が浮かんで見える。
「西に位置するポルトガ国は、造船業が盛んなのだ。そこで購入するがよかろう」
「ダルダス殿。お言葉ですが、西に渡る関所は、封じられているらしいのです」
リョウは盗賊の鍵をテーブルへ置いて、手持ちの鍵では開錠出来ない旨を伝えた。
「心配なさるな。世の中には更に複雑な構造でも、開錠できる鍵は存在するのだ」
立ち上がり、壁に貼られた地図を外し広げる。指が、ツーーッと地図上を滑った。 アッサラームを西へ。イシス大砂漠を通り抜け、南部に到達すると動きを止める。
女王が統治するという、イシス国だ。
「一つは我が家の祖である魔法使いが、イシス王家へ献上した“魔法の鍵”である」
「一つと、仰るからには、他にも鍵があると。……そうですね?」
即座に先へ意識が向く、リョウの炯眼。
それが見て取れるリョウの視線に、ダルダスが深く感心したような笑みを湛える。 |