小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(13/51)
 
 数時間後。漸く、ニノが仕置きから戻ってきた。ニノが受けたのは“魔法の指南”だった筈。しかし何故か、全身傷だらけ。

 ……ボロ雑巾のように草臥れている。

「だ、大丈夫? ホイミいる??」

 芋虫の如く、床を這っているニノ。

 屈み込むライの足元まで来ると、太股へしがみつき頬摺りしてきた。問うまでも無く重傷、棺桶は目前といった感じである。

「頼む……マジでヤバい」

 ゆるゆると頭を上げたニノの顔は、見るも無惨、語るも無惨なほど、痣だらけだ。

(こ、怖っ。凄く、上品そうなおじさんなのに、一体全体、なにしたんだろ……)

 ホイミ一回では、足りそうにない。

 痛みに呻く、ニノ。そして落ち着きを払い、優雅に茶を飲むダルダスを見比べた。

 とてもじゃないが、ライの目へ映るダルダスに、凶暴さなどは露程も見られない。
 能ある鷹は……という言葉があるが、現在の状況は揶揄では無く、正に文字通り。

 死相を浮かべるニノを見て、ライは恐ろしさの余り、詳細を聞くに聞けなかった。
 


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