数時間後。漸く、ニノが仕置きから戻ってきた。ニノが受けたのは“魔法の指南”だった筈。しかし何故か、全身傷だらけ。
……ボロ雑巾のように草臥れている。
「だ、大丈夫? ホイミいる??」
芋虫の如く、床を這っているニノ。
屈み込むライの足元まで来ると、太股へしがみつき頬摺りしてきた。問うまでも無く重傷、棺桶は目前といった感じである。
「頼む……マジでヤバい」
ゆるゆると頭を上げたニノの顔は、見るも無惨、語るも無惨なほど、痣だらけだ。
(こ、怖っ。凄く、上品そうなおじさんなのに、一体全体、なにしたんだろ……)
ホイミ一回では、足りそうにない。
痛みに呻く、ニノ。そして落ち着きを払い、優雅に茶を飲むダルダスを見比べた。
とてもじゃないが、ライの目へ映るダルダスに、凶暴さなどは露程も見られない。 能ある鷹は……という言葉があるが、現在の状況は揶揄では無く、正に文字通り。
死相を浮かべるニノを見て、ライは恐ろしさの余り、詳細を聞くに聞けなかった。 |