遠退いてゆくニノの悲鳴。……厳しい仕置きを処せられるのは、想像に難くない。
叫びを見送り、リョウが眉を顰めた。
「君が尊敬するだけあって、素晴らしい父君だが……ニノの安否が些か気になるな」
「親父は怒らすと見境がねぇからなぁ」
十字を切り、祈るガイラス。あの怯えようは、強ち冗談で済まないと思えてくる。
ガイラスが言うには、あの師弟は昔からあのような感じだとのこと。スパルタというよりも、“豪快”と、括るべきだろう。
半端ないな、と……リョウが苦笑する。
「もう、ニノは……大丈夫だよね?」
話の最中、ニノが見せた表情。恐れを宿した顔を思い出し、ライが心配を深めた。 見慣れないニノの落ち込んだ姿に、実の所ライは、ずっと戸惑っていたのである。
「ああ。立ち直りが早ぇのが、唯一の長所だから心配ねぇと思うぜ」
不安そうな目をするライの頭を乱暴に撫でると、ニッと、白い歯を見せて笑った。 |