「遣わされた、だと?」
驚きは、尤もだった。神の遣いならば、勇者へ課せられた“使命”よりも、重い。 そこまで尊い存在とは考えもしなかったのだろう。口を開けたまま、呆けている。
一言でいえば、馬鹿面。呆れなのか、ダルダスは、叱責が含まれた咳払いをした。
「お前の瞳は天人特有のもの。左右それぞれに、多大なる才が秘められておる」
金色の右目は、“物理”……則ち、魔法の法則を解読し、最大限に引き出せる才。 紺碧の左目は、“精神”……心理に基因するあらゆる事柄を解析する事が叶う才。
それが“万物の瞳”と、云われる由縁だと。ダルダス曰く、才能を開花した暁には殆どの魔法を扱う事が可能になるという。
「だか、怠けていては才は開花せん。修行に励み、心を高めねば才も宝の持ち腐れというもの。並みの魔法使いにも成れんぞ」
言い終わるや否や、ダルダスは何やら文句がありそうな目で、ニノを睨みつけた。 |