小説(雷霆) | ナノ
俗物の天人(8/51)
 
「はっ、オレは人間じゃねぇってか。マジでオカマの言う通りなのかよ」

 ガックリと、力無く下げられた頭。楽天家のニノと雖も、ショックは深いようだ。
 その様子を見ても、ダルダスは顔色一つ変えず、真っ直ぐな視線を外さずにいる。

「早計、前々から人の話はよく聞けと言っておるだろう。天人は男女間から生まれてないだけで、本質は人間とそう変わらん」

 まるで、落ち込むニノを嘲笑うかのように、ダルダスは淡々とした語り口だった。

「ただ、な。神より、強大たる魔力を授かっているのだよ」

 不意にダルダスが、杖を指差して……。

「これは伝令杖。“カドゥケウスの杖”という名だ。凡そ十六年前──といっても、覚えていないだろうが。お前は競りに出されていた時も、この杖を手に握っていたのだよ」

 ……と、述べる。また、杖は天人の証であり、守護なのだと説明を教え聞かした。

「答えになってねぇっての。天人っうのは何で神に創られたんだ? オレは……」

「恐慌を予言されし時。神が、地上へ遣わせる魔術の申し子――と、云われておる」

 “神が遣わせた”という、ダルダスの言葉を聞き、ニノの瞳が驚きで見開かれた。
 


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