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俗物の天人(6/51)
 
 ――邸の中。居間へと通され、一先ずは落ち着く。並び座る四人に馳せられた視線がニノで止まり、瞳へ厳しい光が灯った。

「何用で帰ってきたというのだね」

 弟子の浮かない様子に気付いていたらしい。“早く話せ”と、瞳が急かしている。

「お師匠に、オレ自身のことで聞きてぇことがあってよ。それで、な」

 テーブルの上に、愛用の杖を置いた。

 柄の部分に二匹の蛇が螺旋に絡まり、王冠を模した台に填められているのは紅玉。
 王冠に、“対”になった翼が施されている。細工は巧みだが、些か不気味な杖だ。

「……“天人”って、なんなんだよ」

 ニノの発言で、ガイラスの腰が浮く。

 心配で表情を曇らせるガイラスを、とうのニノは、“構わない”と、手で制した。

「いいんだよ。どの道、知るんなら、こいつらも聞いて貰った方が手間ねぇじゃん」

 片側の口角だけを釣り上げた笑顔。いつもの軽薄な顔付きを表したが、ライと目が合った途端、すぐさま顔を余所へ向ける。

 その様は慌てたようにも見え、ライの位置から、微かに震えた口元が確認できた。

(昨日から、ニノってば変。なんとなく普通を装ってる感じがするんだけど?)

 聞き慣れない“天人”という単語。そして、ニノの表情に示された“恐れ”の色。

 何故か、いつも側にいるニノが遠くに感じられて、ライは不可解さで首を捻った。
 


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