「まあ、よい。それよりも、だ……」
場を切り替えるような咳払いの後、視線は立ち並ぶリョウとライへ。その鋭利な瞳で、ライの背筋は自然と正されてしまう。
「その御方が、勇者殿か」
そう洩らしたダルダスの顔が、笑みで満たされた。ニノとガイラスの二人を、共に旅へと命じたのは、他ならぬダルダスだ。 “勇者との対面が喜ばしい”と、表情が語っている。挨拶に、手を差し伸べるが。
「噂に違わぬ立派なお姿ですな。お会い出来たことを、大変嬉しく思っております」
「いえ、ダルダス殿……」
先に手を握られたのは、リョウである。
肩透かしもいいところだ。ライの方は、挨拶の手を形作ったまま、固まっている。
「親父。隣のちっこいのだぜ、勇者は」
「な、なぬ!? では、あなたは?」
「俺は、リョウと申す者。武闘家です。勇者は……ライ、挨拶しなさい」
「あ、はい。ライ、といいます」
「いやはや、勇者殿がこのような可愛らしげな御方とは! これは失礼致しました」
豪快に笑い飛ばそうとしたダルダスだったが、完全な“ボケ”。失態といえよう。
(確かに、勇者には見えないけどさ……)
慧眼と聞こえたダルダスでさえ、ライは“勇者”と見えぬらしい。ライが、一般的に想像される“勇者像”と異なる証明だ。
ダルダスの反応も当然と思いながらも、ライが内心で傷付いたのは言う迄もない。 |