「君達の故郷だったな。何か、手懸かりでもあるのか?」
“討伐に無益な行動はしない”と暗に示す厳しい言葉に、二人が目を見合わせる。 黙り込むニノを見て、頭を掻き毟ると、咳払いを一つ。ガイラスが、顔を上げた。
「……いや、私用で悪ぃんだが、ちょっくら親父に訊きてぇことがあるんだわ」
「父君に、か」
英知から程遠く見えるガイラスだが、実父のダルダスは、高名な魔法使いである。 ……旅の知恵を借りるには、最良の相手だ。またとない“チャンス”といえよう。
「成る程。俺は異存ないよ。では、食事が終わり次第、準備に取りかかろう」
目的地は中東部の都、アッサラーム。そう決まり、先ずは城下町で準備を整える。
昨晩の後片付けの為か、城門前は俄に騒がしい。立ち回っていた兵士の一人が、ライ達に気付くと、恭しい一礼をしてきた。
「勇者殿のおかげで、被害も少なく感謝であります!」
真面目そうな兵士、ビシッと背筋を伸ばしての敬礼と馬鹿でかい声が少々ウザい。
「いえ。あれは元から、わたくし達を狙ってきたので、当然のことをした迄です」
労うライの言葉を聞いても、兵士は立ち去らず、それどころか身を捩らせている。
どうやら、何か他に用があるらしい。 |