小説(雷霆) | ナノ
ロマリアの死闘(30/31)
 
「君達の故郷だったな。何か、手懸かりでもあるのか?」

 “討伐に無益な行動はしない”と暗に示す厳しい言葉に、二人が目を見合わせる。
 黙り込むニノを見て、頭を掻き毟ると、咳払いを一つ。ガイラスが、顔を上げた。

「……いや、私用で悪ぃんだが、ちょっくら親父に訊きてぇことがあるんだわ」

「父君に、か」

 英知から程遠く見えるガイラスだが、実父のダルダスは、高名な魔法使いである。
 ……旅の知恵を借りるには、最良の相手だ。またとない“チャンス”といえよう。

「成る程。俺は異存ないよ。では、食事が終わり次第、準備に取りかかろう」

 目的地は中東部の都、アッサラーム。そう決まり、先ずは城下町で準備を整える。

 昨晩の後片付けの為か、城門前は俄に騒がしい。立ち回っていた兵士の一人が、ライ達に気付くと、恭しい一礼をしてきた。

「勇者殿のおかげで、被害も少なく感謝であります!」

 真面目そうな兵士、ビシッと背筋を伸ばしての敬礼と馬鹿でかい声が少々ウザい。

「いえ。あれは元から、わたくし達を狙ってきたので、当然のことをした迄です」

 労うライの言葉を聞いても、兵士は立ち去らず、それどころか身を捩らせている。

 どうやら、何か他に用があるらしい。
 


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