「ライ? どうした、急に黙り込んで」
怪訝に覗き込むリョウの顔は、出会った頃から変わらず優しい。その優しさは、ライにとって失いたく無い宝となっていた。
(でも気付いたからって何になる? リョウは僕を“男”と思ってるんだから……)
普通に考えて“同性”から想いを寄せられても、迷惑の一言に尽きるというもの。 もし拒絶されたらと、そう考えただけで胸の奥が、焼け付くような痛みを覚える。
……だからといって“女”と知られようならば、勇者としての称号を失うだろう。
称号を失えば、祖父に非が及ぶと。
支援金が払われなければ、強欲な母は、祖父の養護を怠るのが、目に見えている。 自分へ、最初に“愛”を与えてくれた人を守るため……想いを封じると、決めた。
ベッドから身を離すと、一歩、二歩と、後退しながら、努めて明るい笑顔を装う。
「とにかく、無理は止してね。僕も負担にならないように、精一杯、頑張るから!」
それだけ告げ、自分の想いを知られぬように。ライは、部屋を後にしたのだった。 |