「……酷使するのは」
「うん?」
「体を酷使するのは感心しない。努力と無茶は違うって――リョウの言葉だよ!」
突きつけられた言葉に、ハッとした。
数ヶ月前、ナジミの塔での探索中。無理をするライへ、諭す為に己が伝えた言葉。 仲間を、ライを守ろうとする余りに、持論を曲げていたと……思い至ったようだ。
謝罪に、リョウが深く頭を下げた。
「その通りだ。すまなかった」
「お願いだから、人のことばかりじゃなくって自分も気遣って。僕はリョウを……」
“失いたくない”
続けようとした言葉に、心臓が跳ねる。
リョウの声が聞けるのが嬉しいと、姿があるだけで、熱く甘い想いが疼くことに。 それが、リョウを失いたくない“理由”だったと、高鳴る胸の内が教えてくれた。
“仲間”として、では無い。“異性”に対して抱いて当然の、自然で素直な感情。
(そうか、やっと分かった。これが、“好き”ってこと……なんだ)
呪文の手ほどきを受けた際の、ニノが言った“相手を思いやる心”と、いう教え。 その言葉を思い出し、成功を叶えたのは愛情だと――リョウへの想いだと悟った。 |