「リョウ……! 起きて平気なの!?」
跳ね起きた、次の瞬間には腕へ縋り、心配そうな視線を、真っ直ぐと向けてくる。
「心配かけたな。すまなかったね」
「謝っても駄目なんだからっ! 全然、目を開けないから……不安だったんだよ!」
「大丈夫だ、俺は。君がくれた回復呪文のおかげで、ね」
そう言い、優美な笑みを湛えて見せた。
リョウの笑顔を見れて、安堵したのだろうか。頬を、大粒の涙が滑り落ちてゆく。
嗚咽を懸命に堪え、首に抱きついた。
「うん。無事で、本当に良かっ……た」
「……くっ、苦しいんだ、が」
密着する小さな体が、小刻みに震えることに気付き、宥める手が腰へと回される。
頬を掠める髪から漂う、甘い匂い。
細いが、柔らかな体。か弱く、いたいけな姿だが、その身で懸命に使命へ立ち向かっているのだと、改めて確認させられた。
言い表せないような感情に戸惑った末、「……参ったな」と、いう言葉が洩れる。 それ以上、叙情を示す事を躊躇ったのだろう。黙秘を守るだけの刻が過ぎてゆく。
暁が白ばむ陽光へと、変わる頃。ライが僅かに体を離し、漸く腫れた顔を上げた。 |