小説(雷霆) | ナノ
ロマリアの死闘(25/31)
 
 窓から射し込み暁。その眩しさでリョウは重い瞼を開ける。……生きていると、何処も痛みの無い我が身を、不可解に思う。

「ここは宿、か。では、俺は……」

 その耳へ、微かに聞こえてくるのは他者の寝息。傍らを見ればライが上体だけをベッドに倒して眠っている。無垢で無防備な寝顔に、リョウが柔らな笑みをこぼした。

「ライ、ずっと側に居てくれたのか?」

 髪へ触れてみれば、やけに冷たい。

 きめ細やかな頬を撫でると微かに身を捩る。子供のような愛らしいライの寝顔から目を離せず、リョウの胸に困惑が湧いた。

 ……それと同じくして、身体中へ僅かに残っていた回復呪文の“余韻”に気付く。

 術者の精神の欠片か、余韻の感覚は暖かく優しいと。恐らく、いや間違いなく呪文を成したのはライだろう、と思い至った。

 “守らねば”……初めてライと出会った時から思い続けてきた、誓い。いつの間にか、守られるようになった事に嬉しいような、寂しいような複雑な思いに駆られる。

「ありがとう、ライ」

 細い肩にシーツを掛けた。その微々な重さを感じてか、ライが微睡みから覚めた。
 


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