窓から射し込み暁。その眩しさでリョウは重い瞼を開ける。……生きていると、何処も痛みの無い我が身を、不可解に思う。
「ここは宿、か。では、俺は……」
その耳へ、微かに聞こえてくるのは他者の寝息。傍らを見ればライが上体だけをベッドに倒して眠っている。無垢で無防備な寝顔に、リョウが柔らな笑みをこぼした。
「ライ、ずっと側に居てくれたのか?」
髪へ触れてみれば、やけに冷たい。
きめ細やかな頬を撫でると微かに身を捩る。子供のような愛らしいライの寝顔から目を離せず、リョウの胸に困惑が湧いた。
……それと同じくして、身体中へ僅かに残っていた回復呪文の“余韻”に気付く。
術者の精神の欠片か、余韻の感覚は暖かく優しいと。恐らく、いや間違いなく呪文を成したのはライだろう、と思い至った。
“守らねば”……初めてライと出会った時から思い続けてきた、誓い。いつの間にか、守られるようになった事に嬉しいような、寂しいような複雑な思いに駆られる。
「ありがとう、ライ」
細い肩にシーツを掛けた。その微々な重さを感じてか、ライが微睡みから覚めた。 |