小説(雷霆) | ナノ
ロマリアの死闘(23/31)
 
(僕は、リョウを失いたくない)

 目を堅く閉じているリョウ。触れた手に伝わってくるのは微弱な心音と低い体温。

(奪わないで……リョウを!)

 そう強く願った、と同時。

 白き輝きが、ライの手を軸に広がってゆく。宛も、天使の羽根が散るような、優しい光。その光がリョウの身体を包み込む。
 瞬く間。僅かな間で、忽ちに傷が癒された。回復呪文ホイミの成功、しかし体力の方は、流石に呪文での回復は無理である。

 だが、穏やかなものへと変わった呼吸から、一命を取り留めたのは明らかだった。

「ふぅん。道理で攻撃系が下手な訳だ」

 成功を見届け、ニノがぽつりと洩らす。

「おい、俺にも分かるように説明しろや」

「ライの天賦は回復系ってこと。これだけ属性に偏りがあれば、成功しねぇよな」

「一応、ギラは唱えられんだから、属性は“ある”って事じゃねぇのか?」

「ああっ、面倒臭ぇな。ガイ兄には無用な知識なんだから話すだけ無駄! そんな事よりも、こいつを運んでやんのが先だろ」

 顎でリョウの方を指し、背を向けた。

 ガイラスに背負われるリョウ。それを見ながら、ニノが情けない表情を浮かべる。

「は〜っ、恋敵を助けちまうなんて。オレってば、マジで馬鹿」

 ……と、独り言を一つ。ガックリと肩を落としながら後悔で頭を垂らすのだった。
 


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