リョウの容態は芳しくない。脈をとり終えると、不意にニノがライへ顔を向けた。
「ライ、回復呪文かけてやれよ」
「えっ……。でも、成功したことない」
「あんたは本当に! ……グダグタ、ウジウジと言ってる場合かっての!」
煮え切らないライに苛立っているのか、ガシッと腕を掴み、強引に隣へ座らせる。
「使わせれんのか?」
「さぁな。オレも回復系の知識は、聞きかじり程度だけど。後は――あんた次第だ」
(僕、次第……?)
手短に簡潔に。回復系の理論、即ち、生体組織の仕組み、魔力の関わりを教えた。
最後に“一番大切な事は”と念を押す。
「相手を思いやる“心”が何より重要だ。 それが術を高め……成功へと導くのさ」
ニノの手が、ライの手を取る。握り合ったその手は、リョウの体へと添えられた。 “助けたいだろ?”と、ニノが、か細く洩らし、添えた手を更に強く押し付ける。
「唱えてみろよ。こいつの事を……想いながら、よ」
「ニノ……。う、うん、分かった」
フードに隠され、ニノの表情は窺えないが何処と無く泣いているように聞こえた。 |